【徒然】黄色い涙

原作は永島慎二だそうです。昔NHKでドラマ化されたのを見ていた中学生のころの映画監督の犬童一心さんが、いつか自分で映画にしたいと思っていたものだそうで…。

脚本の市川森一さんは「夢があるから語るんだ」といい、主演の嵐・二宮和也さんは「当時は語るために夢があったんじゃないか」と言っていて、深いなぁと思いながら…これは一回劇場で観たんでした。
劇場と言っても東京グローブ座でしたけど。
(注:もともとのつくりが演劇用の劇場なので映画を観るにはあまり適してません)
確か春休み中だったので、平日の昼間の回にもかかわらずピチピチのギャルズばかりの中で、「この子らこんな地味そうな映画見て面白いと思えるんかなぁ」と思いながら上映が開始し…グローブ座限定の映像でショートコント(?)を繰り広げる嵐に

キャァァァァァァァァァァァァwwヘ√レvv~( ´∀`)・ω・) ゚Д゚)・∀・) ̄ー ̄)´_ゝ`)-_-)=゚ω゚)ノ嵐ヨォ─wwヘ√レvv~─ !!

…となっていたギャルズは、上映終了後なんともいえない表情を浮かべ、案の定無言で会場をあとにしていましたが(笑)
確かに、「面白かった?」と聞かれて「めっちゃおもろかった!」とテンションを上げる感じではないです。
実際この時代(昭和30年代)を経験したわけではないのに、どこか懐かしくてちょっと物悲しい、でも微笑ましくもある…なんとも説明しにくい映画です。

夢があると言いながら、そのための道具を質屋に入れてまで飲み食いしてしまったり。
タナボタで手にした(当時にしては)大金4万円のうち2万円を、たった1週間で浪費してしまったり。
どこからどう考えてもダメ人間の集団としか思えないのに、どこか「まぁでも、そうだよな」と思わされてしまいます。
夢があると言ってもモノになるかはわからない。というより、モノにはならないということを本当はわかってしまっていて、それでもまだ夢にしがみついているフリをしてでもその日暮らしの気楽さから抜け出せないのかなぁ、と。

これでいいのか?と思いながらもヘラヘラふらふら笑って過ごしている前半と、それが一気に覆され厳しい現実を叩きつけられるラストの落差がすごすぎて、逆にリアルだったりします。
そうして急速に変わっていく世の中に抗うのをやめ同じく変わっていくことを選んだ人間と、それでもまだ諦めずに夢の道を歩き続ける人間がいるんですが。

その日その日をカツカツな状態で暮らしながら、それでもみんなで笑って過ごすのは「涙がこぼれないように」だという感じは、その時にわかることではなくて後々になって振り返ったときにしかわからないんじゃないかな?
「ハートで歌える歌手になるためには貧乏体験こそが糧になる」なんて嘯いていた人たちが、現実に挫折して、新しい生活を始めてがむしゃらに走って、ひと段落してそれから。


とりあえず、一応インディーズ映画だからかそんなに登場人物が多くないので観易かったです(そこかよ)。
あと、初回版DVDに収録されているオーディオコメンタリーで監督がCG合成のネタばらしをしているのだけど、「ライティングが難しいから」夜に電車が走るシーンを昼間に撮ってそれをCGで夜にしてあるとか、走っている電車を当時の車両と合成してあるなどの解説を聞きながら観ると、また一味…違うのはいいんですが内容はそっちのけになってしまいます(笑)